ソーラー時計をうまく充電するポイント

明るさを測定する照度計を太陽に向けると、上の写真のように108,200ルックスで10万ルックスを超えることが分かります。(×100の表示になっています) 



一方、それなりに明るい照明下のデスクの上はというと、2枚目の写真のように579.3ルックスです。
案外数字が少ない。



もう一つ、3枚目の写真は、小型で結構明るい1灯型のLEDライトを1cmの直下で測定したもので、何と太陽光並みの明るさがあることが分かります。110,700ルックスでやはり10万ルックス超えです。(×100の表示になっています)

明るさは光源からの距離の二乗に反比例するそうですから、明るさを求めるなら光源に近づくというところがポイントです。(LED電球は白熱球ほど熱くなりませんが、高熱に気を付けてください)
それにしても太陽光とデスクの上の差が数字の桁数で3桁も違うのは、いかに太陽の光が強烈か分かりますね。

さて照度の話が長くなりましたが、今回のテーマはソーラー時計の充電についてです。
ソーラー時計や電波ソーラー時計は、光を文字盤に受けて発電して、それを二次電池に貯めて動いています。
機種によって異なりますが、一旦満タンになれば数ヶ月程度動きます。その間にまた光を当てることで、電気を使っては貯め使っては貯め、止まることなく動き続ける便利な仕組になっています。

ところが、、、
止まってしまった、時間がずれてしまった、合わせてもまたずれる、設定が分からないetc、、、
ソーラー時計(=エコドライブ)の不具合や調整に関して、頻繁に多くのご相談を承っております。
最も多いのは、長年引出しに入れたままで久しぶりに使おうと思ったら動かない、あるいは時間が合わない、という状況です。
引出しの中は真っ暗なので、光による充電は出来ず、長年の内に二次電池は空っぽの過放電となってしまいます。
時計のBOXに入れたままというのも同じことになります。

こういった場合一旦お預かりして、 まず数日かけて業務用の光源でたっぷり充電します。その後、

 基準位置の再設定
 使用場所の時差設定
 電波を拾って時刻合わせ

というところまで順調に進めばめでたく完了で、正常なご使用が出来ることになります。
もし1週間ほどお預かりできれば、ここまでの作業をさせていただくことが出来ます。(¥1,100)
(途中で進まなくなる時は二次電池の不調、メカニズムの不調など修理が必要なこともあります。)

ご自身でトライしてみるのも結構かと思います。メーカーのホームページに手順が載ってますので参考にしてください。
機種によってはかなり複雑な操作を伴い、マニュアルの意味が分からないようなこともあるかも知れませんが、手に負えないようでしたらその時にご相談いただいても結構です。
お気軽にどうぞ!

ソーラー時計をうまく充電するには

普段から、窓ガラス越しで結構ですから太陽の直射日光が当たるところに文字盤を上にして数時間(月に1〜2回)置いておく。

あるいは
LEDや蛍光灯に近づけて数時間数時間(月に1〜2回)置いておく。

この2通りの方法をお勧めします。(一旦空っぽになってしまった時には、満タンになるのに4〜5日かかります>)
テーブルの上に置いておくだけでは、照度が足りずなかなか電気が貯まるところまではいきません。

時計を引き出しの中や、箱の中に入れてしまうと、全く充電できず、いずれ停止してしまいます。さらに時間が経過すると初期設定など内部メモリーが失われて一から設定をする必要が生じることになります。
使わない時でも引出しや箱に入れず、ポンと机の上や窓の側に「文字盤を上にして置いておく」ことをお勧めします。

レトロモダン*指輪をペンダントにリフォーム

大きな石を使ったこんなデザインの指輪がありました。
18金の台座の中央にセッティングされているのは縦長の赤い石です。

大きさが目に入りますが、何よりこの形が面白いですね。
写真でご覧のように、台座の裏側には素敵な模様がありますね。
今回はこういった元の指輪の構造をそのまま使用して、ペンダントトップにすることになりました。

まずはリングの部分をカットします。
そのままでは切り口がギザギザしてますからそれを擦り落として綺麗に研磨します。
一般的にリフォームは作業の都合上、一旦石を外してから行うことが多いのですが、その際は石を留めている爪を起こして終わった後に再度石留するか、もし曲げ伸ばしで爪が使えなくなった場合は爪の付け替えをするなどが必要になり、そうなるとその分の費用もかかることになります。

今回は、枠の構造も考慮した上で、爪を外さずに行うことにしました。
ペンダントの金具を付ける際にバーナーを使ったロー付けが必要になりますが、石にバーナーの炎を当てるわけには行きません。しかしながら当店ではレーザー溶接の設備がありますから、石を外さなくてもピンポイントでの作業が可能で、石にダメージを与えることなく作業することがが可能です。

18金の丸カンをはさんでバチカンを取り付けた後、全体を磨き仕上げすると完成です。

裏側も磨いてこんなふうにピカピカになりました。
元の模様も綺麗に残りましたし、石留めもそのままで安心です。

いかがでしょうか。
どこにもないデザインのペンダントが出来ました。
ゴールドのチェーンに通していただくとそのままお使いいただけます。
元々の直線的なカットがユニークで、素敵なペンダントトップに目を奪われますね。

今回のように元の形を残した上で出来ることは色々ございます。
また一からデザインを作り上げるフルオーダーも、あるいはあらかじめ用意したプレキャストパーツを使用してお作りすることも可能です。
ジュエリーのリフォームをお考えでしたら、まずはお気軽にお声をかけてくださいませ。
米國宝石学会鑑定士 Gemologicai Institute of America Graduete Gemologist がお客様にご満足いただけるよう誠心誠意ご提案申し上げます。

営業時間 10:00〜19:00
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Matsuya
松屋時計店 平松 博
〒640-8033 和歌山市本町2丁目27番地
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FAX 073(422)6667
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CHANEL Dバックルの修理

Dバックルの構造にも各社各モデルによっては色々な違いがあります。
このシャネルのDバックルは革ベルトをまず片側のバーに通して、その後反対側からネジ付きのバーをねじ込んで留める仕組みです。ネジ部分は細くなっていますからいつしかそこに負担がかかってネジが折れ込んでしまった状況です。

修理するに2つの問題があります。

まず折れたネジを取り出せるか?
耐久性も考慮してその部品を作れるのか?

幸運にもネジはなんとか取り出すことに成功しました。
そしてその部品を作ることになる訳ですが、小さい部分に力が加わることになるので強度を持たせないといけません。
あれこれ思いを巡らした結果、ネジ径とピッチが元のネジと同じでで、さらにネジ山の直径がバーより大きいものを見つけて、その両者をレーザー溶接後、研磨するというのが一番いいかなという結論に至りました。ネジそのものをバーに取り付けるのでは直径が細過ぎるので強度に不安があります。

色々探したところ適切な部材が手に入りましたので、その方向で進めていきます。
あらかじめネジ山の厚み分を削ってバーを短くしてネジ側も頭をフラットに研磨。その上で両者をレーザーでくっ付けて必要な長さにカット。レーザーはステンレス同士が溶け合う訳で、ガッチリくっ付きます。最後に研磨すると想像以上に綺麗に仕上がりました。これなら元のパーツと容易に見分けがつかないんじゃないかな。
自分で言うのもなんですが、とてもうまく行って満足であります。

時計の外装部品は各社いろんな工夫や意匠があって、既成のパーツでは置き換えが効かないことが多く見受けられます。
他の時計や宝飾品の修理や加工に関することで、もちろん状況次第で出来る出来ないはありますが、アイデアを考えるのも楽しみですのでお困りの方は遠慮なくお問い合わせくださいませ。

CHANELのDバックル 今回の修理料金は¥5,500(税込)でした。

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CHANELプルミエールの革ひも交換

上記写真は革ひも交換して綺麗になったCHANEL プルミエールです。

CHANEL プルミエール、一目でシャネルと分かる個性的なデザインが多くのファンに愛されている素敵な時計ですね。
この特徴を型作っている要素の一つがブレスに編み込まれている革紐の存在です。CHANELのバッグの持ち手のイメージがそのまま時計のブレス部分に反映されていますね。
素晴らしいデザインですが、長年ご使用になっているうちに、革が傷んだり、切れてしまうこともあります。


これはどうにかならないの?とお尋ねいただくのですが、私の方でも対応させていただくことが可能です。古くなった革紐を取り外して、新しい革紐に交換すれば見違えるようにピッカピカになります。

この時、単に革紐を交換するのではなく、せっかく金属と革を別々にしたのですから、革紐を通す前にブレスを洗浄して綺麗にしてあげるとご覧の通りピッカピカになります。
革紐が通っている状態ではできない作業ですので、この時がチャンスです。

綺麗になったケースとブレスに、新しい革紐を通したところが上の写真です。
最後にムーブメントを組み込んで出来上がったのが一番上の写真です。(料金¥11,000.税込)

シャネルのプルミエールをお持ちの方で、もし革紐が気になっていらっしゃるのでしたら、お気軽にご相談くださいませ。もちろん電池交換やムーブメント修理も承ります。

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お盆期間中も通常通り営業いたします。
8月20日(火)〜27日(火)は夏季休暇とさせていただきます。

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古い時計が古い時計を助ける

1970年代でしょうか。スイス製TECHNOSのBorazonシリーズは超硬ケースがピカピカ光る、「当時の未来」をまとった最先端のデザインが人気でした。
すでに50年近い時を経て修理をお預かりしたこのTECHNOS。全く動きませんが、文字盤は綺麗です。
今はレトロモダンの時代。動くようになれば若い人も持ってみたいと思うんじゃないでしょうか。

ところが中を開けてみると、外観からは想像できないほどムーブメントのサビは深刻で、これを使うのは無理かなという状態。


この機械は確かあったはず。
探してみたところ、あったありました!
同じETAのムーブメント2824を使ってるRADOを発見。


このピカピカのムーブメントを使用すれば問題なし。
カレンダーの色が異なるので、それは入れ替えて、改めてOHして組み上がると、TECHNOS Borazonは見事に蘇りました。

当店は創業昭和23年ですから、かれこれ75年ほど営業していることになります。昔の時計のパーツなどもそれなりに持っておりますので、こんな時にお役に立つと嬉しいものです。
メーカーでは断られるような修理もできるだけやってみようと心がけていますので、お気軽にご相談くださいませ。

時計バンドは松屋時計店の得意分野です!

当ホームページの「MORELLATO時計バンド」のページでご紹介の通り、時計バンドについては内外のメーカーから最新のデザインをピックアップして300点を超える充実したラインナップを揃えております。

時計のデザインやサイズ、お持ちになる方のファッションや用途に合わせて、イタリアのMORELLATOを始めCASISSや国産のMIMOSA、BAMBI、BEARなどの中から実際に手に取って楽しみながらお選びいただけます。

今日はその中から素敵なバンドをご紹介いたします。
まずはCASSIS(カシス)の中から
BREST(ブレスト) 9,900円(税込)

フランスの老舗タンナーであるROUX(ルー)社が手がける最高級ランクの革として知られるEPSOM(エプソン)を使用。 世界のトップメゾンが認め、高級バッグにも採用するこだわりのレザーです。 ほどよいしなやかさと張りが上品で、カーフの中では汚れや水にも比較的強く、柔らかな発色時計を引き立てます。 また裏材にはHAAS(ハース)社が手がける高級皮革ZERMATT(ツェルマット)をチョイスし、上質な素材を贅沢に使用した逸品です。

HERMESを始めとするヨーロピアンデザインにもピッタリと合いますね。
カラーバリエーションは、ゴールドブラウンはもちろん、人気のグレージュカラーやブルージーンのチョーキーな色目もあって目移りしてしまいます。
柔らかい上質な革の手触りは格別です。

次は夏場の汗に強いタイプで、かと言って普通のウレタンバンドじゃないものを
MORELLATO(モレラート)の中からご紹介します。

CORDURA(コーデュラ)6,600円(税込) 左のブラックとグリーンの2本

ナイロンの7倍もの強度を持つ繊維「CORDURA(コーデュラ)」を使用したモデル。
裏面には特殊素材ロリカを使用し、水や汗にもより強くなりました。
バッグやアウトドア用のウェアなどにも使用されており、ミリタリー系の時計はもちろん、カジュアルな時計にも良く合います。


BIKING6,600円(税込)(バイキング) 中央の2本
表面にカーボンの型押しを施したラバーを使用しています。
鮮やかなステッチを施すことにより、モノトーンの中にアクセントが加わりベルトが一段と上質さを備えます。
また、裏面にはステッチと同色のロリカが使用され、汗に強い機能美と黒に映える色彩美が融合した一本です。


CAREZZA(カレッツァ)6,600円(税込) 右の3本 
肌触りが良く、しなやかなシリコンを使用。
エンドピース部分の厚みが約5.3mmとなっており、モレラートの商品ラインの中でも厚みのあるモデル。
一見すると厚手のカーフベルトのような重厚な質感と、大胆に配されたステッチは、
ダイバーウォッチはもちろん、クロノグラフやミリタリー系ウォッチなどの大型の時計に特におすすめです。
ラウンド型の剣先にあわせて遊革・定革にあたる部分にも丸みを持たせるなど、細かいディテールへのこだわりも感じさせます。

MORELLATOやCASSISを始めとする各種バンドで、店頭に在庫がない場合でもお取り寄せが可能です。その際に送料は必要ございません。
取り付けも無料ですので、是非ご利用くださいませ。

また各種加工も承ります。
例えば下記のように、バンドの中央部に切り込みがある場合でも個別の加工で対応できることもございます。

さらにDバックルや飾りピン、バネ棒やピンバックルなどのバンド部分もたっぷりと用意しております。
ブレスの修理などで、「これは無理かな?」と思うようなことでも遠慮なくご相談くださいませ。レーザー溶接機などの設備もございますので、場合によっては無理を可能にするチャンスもあるかもしれません。

ご来店をお待ち申し上げます。

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OMEGAのブレス修理いろいろ

OMEGA SeamasterやSpeedmasterのブレスレットの修理が増えています。

今回はブレスのコマの接続部分ではなく、クラスプ部分の修理について具体例をご紹介します。

まず片側をプッシュしてブレスを開くタイプです。上の画像は修理完了のものです。
このタイプはオメガのSpeedmasterにも見られる構造ですね。

下の画像の赤い矢印の部分のステンレスの板がはがれて浮いてしまったことで、いもネジと呼ばれるごく小さなネジが飛んでしまってます。その結果中のパーツが外れてバラバラになったんですね。

はがれた部分は当店のレーザー溶接機で溶解・共付けして箱型の構造をしっかり復元しました。
その後、上の画像で見えるような小さなスプリングがへったってるのでそれを交換。組み立てた後、紛失したいもネジを合わせてクラスプ部分を修理しました。今回はボタンの役目をしている凸凹した四角のパーツがあったので数千円での修理となりました。
もしこのパーツがないとハウジング部分一式の交換となって最近ですと4万円近くかかることになります。
お持ちのオメガのバンドが壊れた場合は、とにかく散らばった部品を探してください。小さな部品でもなんでも拾って一緒にお持ちください。

下のはもう一つの例です。これも修理完了した画像です。

この時計の場合はクラスプの両側にボタンのような部分があって、それをつまむように押し込むと開くようになっています。
長年使用しているうちに、その部分がスムーズに動かなくなって腕に留めることができなくなってしまいました。

これを分解すると下記のような構造になっています。
とは言っても、この画像は一度分解した後洗浄、修理して組み立てる前の状態なので、汚れは取れて綺麗になっています。分解前はあちこちに汚れがこびり付いて稼働部分が固まっていました。

このタイプのクラスプは複雑な構造になっており、上の緑の矢印の中にスプリングと可動するパーツが2組入っていて、へたったスプリングは2本共交換しました。
これでうまく直るはずだったのですが、なぜか動きが堅い。実用にならないほど硬い。という予期せぬ事態になり、あれこれと試して見ること1時間、そして2時間、、、
そうこうしているうちに、時間はかかりましたがついに取り合い部分の角の摩耗が原因だと突き止めることができました。
そこから問題をどうやってクリアするかは、案外スムーズでした。
隙間の部分に必要な遊びの間隔を加えると0.7mmになると推定。棒状のステンレスは0.1mm刻みで用意してるので必要な長さを切り出して、地板にレーザー溶接。組み立ててみるとばっちりでした。
開閉もスムーズにできるようになりました。
経年変化なので普通の修理だとクラスプ一式交換、もしくはブレス交換になるケースです。
そうなると数万円〜10万円超えですが、今回は1万円までで修理完了となりました。

今回はオメガの時計バンドの修理の実例を詳細にご覧いただきました。
時計のバンドに限りませんが、たいての場合メーカーに修理を依頼すればきれいに直っってくると思います。費用のことを抜きにすればそれで何の問題もなくお使いになれます。
ただ、故障の原因が特定の部分で、それさえ解決すれば費用ちょっぴりで使えるようになることは度々あります。
ちょっとしたことなんですよね。
それを修理する意欲があって必要な設備を備えて経験があればできることも多いんです。

地域に根ざした昭和23年から続く時計店として問題を解決できるよう日夜頑張っておりますので、お気軽にご相談いただけば喜んで取り組ませていただきます。

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CARTIERの電池交換は少し時間が必要な理由

最近CARTIERの電池交換について、お知り合いの方からのご紹介や、インターネットのレビューをご覧になったりしてご相談を頂戴することが増えています。
今日はカルティエの代表的なモデル:タンクフランセーズを例に取って、電池交換や内部点検の際に私が注意している極めて重要なポイントの一つをご紹介します。

上の写真は裏ブタのネジを外したとことです。
4隅がネジ留めになっていて裏ブタはケース縁に埋まっているので、ここから裏ブタを取り出す際には傷を付けないよう自作の治具を使います。不用意にこじ開けなどで外から引っ掛けようとすると、とっかかりがなく滑らしてしまうような構造ですね。
フタを開けるとこんな風になっています。

下の写真をご覧ください。ここが重要なポイントです。

矢印のあたり一面に汚れがついているのが見えます。
ケースと裏ブタの僅かな隙間に汗や水分に溶けてこうした汚れが溜まります。
パッキンがしっかりしているとそこで止まりますので、内部の機械部分には入り込まないように出来ている訳です。

裏ブタの方に着いた汚れは割合簡単に除去できますが、タンクフランセーズの構造ですとケース側に着いた汚れの方は簡単ではありません。
さまざまな道具を使用しながら、とにかくケース内やムーブメント内に散らばらないようにすることが最優先の作業となります。

この作業を飛ばして電池交換をするとどうなるでしょうか?
一旦裏ブタを開けたことで、その周辺に着いていた汚れは浮き上がります。それをそのままにして蓋を締めると、浮き上がった汚れはパラパラとケース内部に散らばって行きます。それが歯車の隙間に挟まるとその時点で時計は止まってしまします。結果、OH分解掃除しないと動かないことになる訳です。ケースを開けるということは、そのような事態を招くこともあるので常に細心の注意を払う必要があると思っています。

下の写真で分かるように、取った汚れがこんなにあるのかと驚きます。

でもきっちりと取り切れば、こんなにスッキリします。
パッキンにはシリコンを塗布、電池も入れ替えて問題なく正常に動いています。

裏ブタを締める直前ですが、右の緑色の物は細かい汚れをくっ付けて除去する樹脂です。
ねじ山なども綺麗にしてから締めていきます。


ネジを締めてこれで出来上がりました。
気持ち良くなりましたね。


今回は汚れを内部に落とさない、残さないという部分についてご紹介しました。

こうして電池交換が完了しましたが、実際の作業では汚れのことだけを注意しているわけではありません。水分が残っていないかとか、前の電池の液漏れがないかとか、ムーブメントの状態、消費電流、油切れ、電極、リューズ、巻真、ガラス、針、ブレスレット等々、さまざまなポイントを点検しながらの作業となります。
丁寧に作業を行いますので、コンディションによって少しお時間を頂戴する場合もありますこと、どうかご理解いただきますようお願い申し上げます。

下は私が使用しているNIKONの双眼顕微鏡です。8倍〜50倍に拡大することが可能で、ルーペ(2.5倍〜10倍)では見逃すかもしれない微細な部分も両目で立体的に見ながら作業ができます。
頼りになる相棒です。

ARNE JACOBSENの掛時計修理

巨匠アルネ・ヤコブセンの名作Wall Clock。現在の製品は日本製か台湾製のムーブメントに変わっているようですが、元々はドイツ製のムーブメントが使用されていました。

さて、今回修理するのはドイツ製のモデルです。

カーブしたガラスと文字盤のわずかな隙間に針が収められています。
ベゼルはほとんどないも同然。余計なものを排除した文字盤は明快で、ガラスは裏側からワイヤーでテンションをかけて固定しています。こうした構造はデザインを実現するためにあるということがよく分かります。


このムーブメントにはJUNGHANSの文字があります。単3の機械ですが、針が相当重いので普通のムーブメントでは止まってしまうでしょう。これは高トルク型ですね。
分解して故障の原因を探ってみたところ、回路のパターンに緑青が吹いてる状態で、これをパスしてみましたが内部まで壊れて発振していない状態でした。これはその部分を交換する必要があります。秒針用の歯車もあるのですが、これは使用せず時分の2針となっています。ムーブメント一式交換できればそれでもいいのですが、そもそも入手できるものかどうか?

そんな状況の中、UNGHANSはすでに廃番?
それでも最終的に同じドイツ製の同型で高トルクの1秒発振のムーブメントを入手できました。
この回路を入手できて良かったです。これがないと始まりません。
筒車の高さが異なるので入れ替えはできませんが、その部分以外は同じ構造ですので、いいとこ取りで組み上げていきます。


最後にガラスを取り付けるところは緊張の場面です。
とにかく割れないように気をつけて慎重にも慎重を重ねての作業となります。
という流れで無事完成!
JACOBSEN、いいなあ。

文字盤を描く

置時計の文字盤の色が薄くなったり焼けたりした場合にどんなことができるでしょうか。
元々の文字盤が入手できれば丸ごと交換するのも一案かと思います。
それが出来ないとなると、さあどうしましょうか。
今回は数字を手描きで修復することにしました。

数十年経過してる元々の雰囲気をできるだけ壊さないように、数字だけを修復することにしました。
書体を見てお分かりの通り、フォントの装飾部分であるセリフが細いこと細いこと。果たしてこんな線を描けるのかなあ?心配もありますが、できる限りの準備をして臨みます。

描くと決めた以上、筆と塗料には最大の注意を払って選びます。今回「00000」とゼロが5個並ぶ面相筆を使ってみます。塗料は秘密。
顕微鏡下で時間を無限に?使ってゆっくりゆっくりと進めます。息を止めて集中するので酸欠になりそう。

一つできるごとに休憩しながらですが、手の筋肉も段々凝り固まってきます。
ふらふらになりつつようやく「6時」まで来たところです。
半分で出来たと喜んでたのですが、ふと後半10時からは数字が2桁になるので実はまだ半分に達してないことに気が付きうろたえます。ぬか喜びです。
それでも焦らず一歩一歩、目の前の数字に集中することだけを考えて進みます。
時間はかかりましたが、ようやく完成した時の安堵、嬉しさは格別でした。

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