電波時計はほぼ全ての機種が光を文字盤で受けて発電して、それをキャパシタに溜めて、その電力でクオーツムーブメントを動かす仕組みになっています。一種の太陽光発電ですね。
正常に動いている間は時刻を正確に教えてくれるのでとても便利な反面、一旦止まったり時刻がずれてしまうと、元通りにするには一定の操作を要求されるので、マニュアルを見ずに直感的にささっと合わせることは難しい仕組みになっています。
そんな時はまず最初に充電ができているかどうか?確認してください。
充電レベルが確認できるモデルは少ないので、おかしいなと思ったらとにかく充電してみることをお勧めします。
身近で一番強い光は晴天の太陽光です。ガラス越しでいいので直射日光が当たる窓際に時計の文字盤を日の指す方向に向けて最低でも1日、できれば2〜3日は十分な光を浴びさせてください。もし電池残量がゼロだった場合は、その状態で5〜6日充電してようやく満タンになるイメージです。文字盤の面積は小さいので、充電には結構時間がかかります。
太陽光以外ですと、家庭用の電気スタンド(蛍光灯やLEDライト)を極力近付けて充電してください。
蛍光灯やLEDライトの場合は1〜2cmまで近付けてもほとんど熱くないので大丈夫かと思います。
こうした人工灯は明るいように見えても、太陽光と比べると1/10とか1/00とかのレベルでしかないので、同じだけの充電をするにはより長い時間を必要とします。
明るさは距離の二乗に反比例するそうですから、天井に取り付けた照明器具に向けてテーブルに時計を置いて充電してもまるで捗らず気休め程度にしかなりません。
なおフィラメントの入った電球やハロゲンランプで充電する時は熱くならない程度に十分な距離を取ってください。
こうして充電している内に十分なレベルに達すると、深夜(1時〜5時ぐらい)に自動的に電波を拾って気が付けば正常な状態に戻っていることもあるでしょう。
こうなればしめたもの。念の為にもうしばらく充電を続けてみることをお勧めします。
電波受信のタイミングは深夜の電波が伝わりやすい時間帯に設定されています。窓際に時計を置いておくと受信しやすく、一方で地下室や周りを建物や壁で塞がれた場所では受信出来ないこともあります。
昼間なら見通しの良い場所で強制受信を試してみてください。電波を受信中は時計から手を離して動かさないことがコツです。
充電はちょうど風呂桶にお湯を溜めるようなイメージです。
半分溜まった状態でも何とか風呂に入ることは出来ますが、体を洗ったりする内にそこからお湯は減ってしまいます。どうせなら満タン一杯溜めておけばより安心です。
一旦満タンになれば、数ヶ月は何もせずとも時計は動いてくれます。その後は少なくとも1ヶ月に1日ぐらいは太陽光にしっかり当てていただけば余裕を持って正常な状態でお使いいただけると思います。
当然のことですが、時計を引き出しにしまっていたりすると中は暗闇ですから充電はできません。そういった閉め切った場所に長期保管していると、キャパシタに溜めた電力も少しずつ放電していって、そのうちに時計は止まり、最後は空っぽになります。機種によっては自動的に省エネモードになるのですが、いずれにしても増えることはなくて、徐々になくなっていきます。
そうなると内部で記憶している基準位置情報などが失われて、充電しただけでは元通り正常に動かないという面倒な状態になることが多く見られます。
充電が十分でも、ショックや磁気で基準位置がずれることもあります。
充電してみたものの時間やカレンダーが合わない、あるいは動きがおかしい場合はマニュアルに書かれた操作をすることになります。
次にすることの一つは基準位置合わせです。
電波時計は日本では
福島県のおおたかどや山標準電波送信所(40kHz)
佐賀県のはがね山標準電波送信所(60kHz)
これら2箇所からの電波を受信して動いています。
(最近のGPS全地球測位システムを利用した機種は異なります。)
時計にはあらかじめ基準位置があり、電波に乗って送られてくる情報によって、その基準位置からどれだけ動けばいいか判断して動くことになります。もし基準位置がずれていると、せっかく電波を拾っても、その分だけずれる結果となります。
もう一つ確認すべきは、使用する場所が日本になっているかどうかです。
ワールドタイムとして設計されている場合は、それが異なると、日本の電波を拾えない状態になっているので、そこを日本に設定します。
これらは充電レベルが復活すれば、必要な操作によって元通り使えるようになるケースです。この辺りで問題が解決できればいいのですが、いかがでしょうか。
もしこれでも不具合が解消されない場合は、解決に向けて別の方法を探ることになります。
一連の操作については個々の時計特有の手順があって多岐に渡るため、残念ながらここでご案内することはとても出来ません。
時計に付属している取扱説明書を見ていただくか、あるいは下記のサイトでダウンロードできる仕組みになっていますので、お持ちの機種を確認の上で試してみてください。
機種の品番は裏ブタに刻印されています。
SEIKO取扱説明書
https://www.seikowatches.com/jp-ja/customerservice/instruction
CITIZEN取扱説明書
https://citizen.jp/support-jp/manual/selection.html
CASIO取扱説明書
https://www.casio.com/jp/support/watches/manual/
実際は機種によって結構複雑な操作が必要になったりもします。またオールリセット(パソコンの再起動のようなもの)が必要になることもあるので、やってみないと分からないという感じです。
コンディションによっては、基準位置に合わせようとしても途中で止まってしまったり、違う時刻のまま動き出してしまったり、リューズ操作が出来ないなど、設定することが出来ない状態になっていることもあります。
これは時計内部の輪列の油切れなどによる抵抗が大きくなったか、電力を溜めておくキャパシタが消耗したか、リューズ周りに不具合があるか、いずれにしてもメーカーでの修理が必要な状況を意味しますので、その際にはご用命くださいませ。
ご自身でこうした作業をするのはちょっと不安と思われる方、故障かどうか分からない場合など、お持ちいただけば、状態の判断から必要に応じて充電や設定や修理をご案内いたします。
どうぞお気軽にご相談くださいませ。
充電から設定で完了した場合:費用 1,100円(税込)
十分な充電から設定まで、約1週間ほどお預かりすることになります。
修理の場合は見積もりをさせていただきます。修理完了まで約1ヶ月です。
Matsuya
松屋時計店 平松 博
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