CHANEL Dバックルの修理

Dバックルの構造にも各社各モデルによっては色々な違いがあります。
このシャネルのDバックルは革ベルトをまず片側のバーに通して、その後反対側からネジ付きのバーをねじ込んで留める仕組みです。ネジ部分は細くなっていますからいつしかそこに負担がかかってネジが折れ込んでしまった状況です。

修理するに2つの問題があります。

まず折れたネジを取り出せるか?
耐久性も考慮してその部品を作れるのか?

幸運にもネジはなんとか取り出すことに成功しました。
そしてその部品を作ることになる訳ですが、小さい部分に力が加わることになるので強度を持たせないといけません。
あれこれ思いを巡らした結果、ネジ径とピッチが元のネジと同じでで、さらにネジ山の直径がバーより大きいものを見つけて、その両者をレーザー溶接後、研磨するというのが一番いいかなという結論に至りました。ネジそのものをバーに取り付けるのでは直径が細過ぎるので強度に不安があります。

色々探したところ適切な部材が手に入りましたので、その方向で進めていきます。
あらかじめネジ山の厚み分を削ってバーを短くしてネジ側も頭をフラットに研磨。その上で両者をレーザーでくっ付けて必要な長さにカット。レーザーはステンレス同士が溶け合う訳で、ガッチリくっ付きます。最後に研磨すると想像以上に綺麗に仕上がりました。これなら元のパーツと容易に見分けがつかないんじゃないかな。
自分で言うのもなんですが、とてもうまく行って満足であります。

時計の外装部品は各社いろんな工夫や意匠があって、既成のパーツでは置き換えが効かないことが多く見受けられます。
他の時計や宝飾品の修理や加工に関することで、もちろん状況次第で出来る出来ないはありますが、アイデアを考えるのも楽しみですのでお困りの方は遠慮なくお問い合わせくださいませ。

CHANELのDバックル 今回の修理料金は¥5,500(税込)でした。

Matsuya

松屋時計店 平松 博

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CHANELプルミエールの革ひも交換

上記写真は革ひも交換して綺麗になったCHANEL プルミエールです。

CHANEL プルミエール、一目でシャネルと分かる個性的なデザインが多くのファンに愛されている素敵な時計ですね。
この特徴を型作っている要素の一つがブレスに編み込まれている革紐の存在です。CHANELのバッグの持ち手のイメージがそのまま時計のブレス部分に反映されていますね。
素晴らしいデザインですが、長年ご使用になっているうちに、革が傷んだり、切れてしまうこともあります。


これはどうにかならないの?とお尋ねいただくのですが、私の方でも対応させていただくことが可能です。古くなった革紐を取り外して、新しい革紐に交換すれば見違えるようにピッカピカになります。

この時、単に革紐を交換するのではなく、せっかく金属と革を別々にしたのですから、革紐を通す前にブレスを洗浄して綺麗にしてあげるとご覧の通りピッカピカになります。
革紐が通っている状態ではできない作業ですので、この時がチャンスです。

綺麗になったケースとブレスに、新しい革紐を通したところが上の写真です。
最後にムーブメントを組み込んで出来上がったのが一番上の写真です。(料金¥11,000.税込)

シャネルのプルミエールをお持ちの方で、もし革紐が気になっていらっしゃるのでしたら、お気軽にご相談くださいませ。もちろん電池交換やムーブメント修理も承ります。

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古い時計が古い時計を助ける

1970年代でしょうか。スイス製TECHNOSのBorazonシリーズは超硬ケースがピカピカ光る、「当時の未来」をまとった最先端のデザインが人気でした。
すでに50年近い時を経て修理をお預かりしたこのTECHNOS。全く動きませんが、文字盤は綺麗です。
今はレトロモダンの時代。動くようになれば若い人も持ってみたいと思うんじゃないでしょうか。

ところが中を開けてみると、外観からは想像できないほどムーブメントのサビは深刻で、これを使うのは無理かなという状態。


この機械は確かあったはず。
探してみたところ、あったありました!
同じETAのムーブメント2824を使ってるRADOを発見。


このピカピカのムーブメントを使用すれば問題なし。
カレンダーの色が異なるので、それは入れ替えて、改めてOHして組み上がると、TECHNOS Borazonは見事に蘇りました。

当店は創業昭和23年ですから、かれこれ75年ほど営業していることになります。昔の時計のパーツなどもそれなりに持っておりますので、こんな時にお役に立つと嬉しいものです。
メーカーでは断られるような修理もできるだけやってみようと心がけていますので、お気軽にご相談くださいませ。

時計バンドは松屋時計店の得意分野です!

当ホームページの「MORELLATO時計バンド」のページでご紹介の通り、時計バンドについては内外のメーカーから最新のデザインをピックアップして300点を超える充実したラインナップを揃えております。

時計のデザインやサイズ、お持ちになる方のファッションや用途に合わせて、イタリアのMORELLATOを始めCASISSや国産のMIMOSA、BAMBI、BEARなどの中から実際に手に取って楽しみながらお選びいただけます。

今日はその中から素敵なバンドをご紹介いたします。
まずはCASSIS(カシス)の中から
BREST(ブレスト) 9,900円(税込)

フランスの老舗タンナーであるROUX(ルー)社が手がける最高級ランクの革として知られるEPSOM(エプソン)を使用。 世界のトップメゾンが認め、高級バッグにも採用するこだわりのレザーです。 ほどよいしなやかさと張りが上品で、カーフの中では汚れや水にも比較的強く、柔らかな発色時計を引き立てます。 また裏材にはHAAS(ハース)社が手がける高級皮革ZERMATT(ツェルマット)をチョイスし、上質な素材を贅沢に使用した逸品です。

HERMESを始めとするヨーロピアンデザインにもピッタリと合いますね。
カラーバリエーションは、ゴールドブラウンはもちろん、人気のグレージュカラーやブルージーンのチョーキーな色目もあって目移りしてしまいます。
柔らかい上質な革の手触りは格別です。

次は夏場の汗に強いタイプで、かと言って普通のウレタンバンドじゃないものを
MORELLATO(モレラート)の中からご紹介します。

CORDURA(コーデュラ)6,600円(税込) 左のブラックとグリーンの2本

ナイロンの7倍もの強度を持つ繊維「CORDURA(コーデュラ)」を使用したモデル。
裏面には特殊素材ロリカを使用し、水や汗にもより強くなりました。
バッグやアウトドア用のウェアなどにも使用されており、ミリタリー系の時計はもちろん、カジュアルな時計にも良く合います。


BIKING6,600円(税込)(バイキング) 中央の2本
表面にカーボンの型押しを施したラバーを使用しています。
鮮やかなステッチを施すことにより、モノトーンの中にアクセントが加わりベルトが一段と上質さを備えます。
また、裏面にはステッチと同色のロリカが使用され、汗に強い機能美と黒に映える色彩美が融合した一本です。


CAREZZA(カレッツァ)6,600円(税込) 右の3本 
肌触りが良く、しなやかなシリコンを使用。
エンドピース部分の厚みが約5.3mmとなっており、モレラートの商品ラインの中でも厚みのあるモデル。
一見すると厚手のカーフベルトのような重厚な質感と、大胆に配されたステッチは、
ダイバーウォッチはもちろん、クロノグラフやミリタリー系ウォッチなどの大型の時計に特におすすめです。
ラウンド型の剣先にあわせて遊革・定革にあたる部分にも丸みを持たせるなど、細かいディテールへのこだわりも感じさせます。

MORELLATOやCASSISを始めとする各種バンドで、店頭に在庫がない場合でもお取り寄せが可能です。その際に送料は必要ございません。
取り付けも無料ですので、是非ご利用くださいませ。

また各種加工も承ります。
例えば下記のように、バンドの中央部に切り込みがある場合でも個別の加工で対応できることもございます。

さらにDバックルや飾りピン、バネ棒やピンバックルなどのバンド部分もたっぷりと用意しております。
ブレスの修理などで、「これは無理かな?」と思うようなことでも遠慮なくご相談くださいませ。レーザー溶接機などの設備もございますので、場合によっては無理を可能にするチャンスもあるかもしれません。

ご来店をお待ち申し上げます。

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OMEGAのブレス修理いろいろ

OMEGA SeamasterやSpeedmasterのブレスレットの修理が増えています。

今回はブレスのコマの接続部分ではなく、クラスプ部分の修理について具体例をご紹介します。

まず片側をプッシュしてブレスを開くタイプです。上の画像は修理完了のものです。
このタイプはオメガのSpeedmasterにも見られる構造ですね。

下の画像の赤い矢印の部分のステンレスの板がはがれて浮いてしまったことで、いもネジと呼ばれるごく小さなネジが飛んでしまってます。その結果中のパーツが外れてバラバラになったんですね。

はがれた部分は当店のレーザー溶接機で溶解・共付けして箱型の構造をしっかり復元しました。
その後、上の画像で見えるような小さなスプリングがへったってるのでそれを交換。組み立てた後、紛失したいもネジを合わせてクラスプ部分を修理しました。今回はボタンの役目をしている凸凹した四角のパーツがあったので数千円での修理となりました。
もしこのパーツがないとハウジング部分一式の交換となって最近ですと4万円近くかかることになります。
お持ちのオメガのバンドが壊れた場合は、とにかく散らばった部品を探してください。小さな部品でもなんでも拾って一緒にお持ちください。

下のはもう一つの例です。これも修理完了した画像です。

この時計の場合はクラスプの両側にボタンのような部分があって、それをつまむように押し込むと開くようになっています。
長年使用しているうちに、その部分がスムーズに動かなくなって腕に留めることができなくなってしまいました。

これを分解すると下記のような構造になっています。
とは言っても、この画像は一度分解した後洗浄、修理して組み立てる前の状態なので、汚れは取れて綺麗になっています。分解前はあちこちに汚れがこびり付いて稼働部分が固まっていました。

このタイプのクラスプは複雑な構造になっており、上の緑の矢印の中にスプリングと可動するパーツが2組入っていて、へたったスプリングは2本共交換しました。
これでうまく直るはずだったのですが、なぜか動きが堅い。実用にならないほど硬い。という予期せぬ事態になり、あれこれと試して見ること1時間、そして2時間、、、
そうこうしているうちに、時間はかかりましたがついに取り合い部分の角の摩耗が原因だと突き止めることができました。
そこから問題をどうやってクリアするかは、案外スムーズでした。
隙間の部分に必要な遊びの間隔を加えると0.7mmになると推定。棒状のステンレスは0.1mm刻みで用意してるので必要な長さを切り出して、地板にレーザー溶接。組み立ててみるとばっちりでした。
開閉もスムーズにできるようになりました。
経年変化なので普通の修理だとクラスプ一式交換、もしくはブレス交換になるケースです。
そうなると数万円〜10万円超えですが、今回は1万円までで修理完了となりました。

今回はオメガの時計バンドの修理の実例を詳細にご覧いただきました。
時計のバンドに限りませんが、たいての場合メーカーに修理を依頼すればきれいに直っってくると思います。費用のことを抜きにすればそれで何の問題もなくお使いになれます。
ただ、故障の原因が特定の部分で、それさえ解決すれば費用ちょっぴりで使えるようになることは度々あります。
ちょっとしたことなんですよね。
それを修理する意欲があって必要な設備を備えて経験があればできることも多いんです。

地域に根ざした昭和23年から続く時計店として問題を解決できるよう日夜頑張っておりますので、お気軽にご相談いただけば喜んで取り組ませていただきます。

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CARTIERの電池交換は少し時間が必要な理由

最近CARTIERの電池交換について、お知り合いの方からのご紹介や、インターネットのレビューをご覧になったりしてご相談を頂戴することが増えています。
今日はカルティエの代表的なモデル:タンクフランセーズを例に取って、電池交換や内部点検の際に私が注意している極めて重要なポイントの一つをご紹介します。

上の写真は裏ブタのネジを外したとことです。
4隅がネジ留めになっていて裏ブタはケース縁に埋まっているので、ここから裏ブタを取り出す際には傷を付けないよう自作の治具を使います。不用意にこじ開けなどで外から引っ掛けようとすると、とっかかりがなく滑らしてしまうような構造ですね。
フタを開けるとこんな風になっています。

下の写真をご覧ください。ここが重要なポイントです。

矢印のあたり一面に汚れがついているのが見えます。
ケースと裏ブタの僅かな隙間に汗や水分に溶けてこうした汚れが溜まります。
パッキンがしっかりしているとそこで止まりますので、内部の機械部分には入り込まないように出来ている訳です。

裏ブタの方に着いた汚れは割合簡単に除去できますが、タンクフランセーズの構造ですとケース側に着いた汚れの方は簡単ではありません。
さまざまな道具を使用しながら、とにかくケース内やムーブメント内に散らばらないようにすることが最優先の作業となります。

この作業を飛ばして電池交換をするとどうなるでしょうか?
一旦裏ブタを開けたことで、その周辺に着いていた汚れは浮き上がります。それをそのままにして蓋を締めると、浮き上がった汚れはパラパラとケース内部に散らばって行きます。それが歯車の隙間に挟まるとその時点で時計は止まってしまします。結果、OH分解掃除しないと動かないことになる訳です。ケースを開けるということは、そのような事態を招くこともあるので常に細心の注意を払う必要があると思っています。

下の写真で分かるように、取った汚れがこんなにあるのかと驚きます。

でもきっちりと取り切れば、こんなにスッキリします。
パッキンにはシリコンを塗布、電池も入れ替えて問題なく正常に動いています。

裏ブタを締める直前ですが、右の緑色の物は細かい汚れをくっ付けて除去する樹脂です。
ねじ山なども綺麗にしてから締めていきます。


ネジを締めてこれで出来上がりました。
気持ち良くなりましたね。


今回は汚れを内部に落とさない、残さないという部分についてご紹介しました。

こうして電池交換が完了しましたが、実際の作業では汚れのことだけを注意しているわけではありません。水分が残っていないかとか、前の電池の液漏れがないかとか、ムーブメントの状態、消費電流、油切れ、電極、リューズ、巻真、ガラス、針、ブレスレット等々、さまざまなポイントを点検しながらの作業となります。
丁寧に作業を行いますので、コンディションによって少しお時間を頂戴する場合もありますこと、どうかご理解いただきますようお願い申し上げます。

下は私が使用しているNIKONの双眼顕微鏡です。8倍〜50倍に拡大することが可能で、ルーペ(2.5倍〜10倍)では見逃すかもしれない微細な部分も両目で立体的に見ながら作業ができます。
頼りになる相棒です。

ARNE JACOBSENの掛時計修理

巨匠アルネ・ヤコブセンの名作Wall Clock。現在の製品は日本製か台湾製のムーブメントに変わっているようですが、元々はドイツ製のムーブメントが使用されていました。

さて、今回修理するのはドイツ製のモデルです。

カーブしたガラスと文字盤のわずかな隙間に針が収められています。
ベゼルはほとんどないも同然。余計なものを排除した文字盤は明快で、ガラスは裏側からワイヤーでテンションをかけて固定しています。こうした構造はデザインを実現するためにあるということがよく分かります。


このムーブメントにはJUNGHANSの文字があります。単3の機械ですが、針が相当重いので普通のムーブメントでは止まってしまうでしょう。これは高トルク型ですね。
分解して故障の原因を探ってみたところ、回路のパターンに緑青が吹いてる状態で、これをパスしてみましたが内部まで壊れて発振していない状態でした。これはその部分を交換する必要があります。秒針用の歯車もあるのですが、これは使用せず時分の2針となっています。ムーブメント一式交換できればそれでもいいのですが、そもそも入手できるものかどうか?

そんな状況の中、UNGHANSはすでに廃番?
それでも最終的に同じドイツ製の同型で高トルクの1秒発振のムーブメントを入手できました。
この回路を入手できて良かったです。これがないと始まりません。
筒車の高さが異なるので入れ替えはできませんが、その部分以外は同じ構造ですので、いいとこ取りで組み上げていきます。


最後にガラスを取り付けるところは緊張の場面です。
とにかく割れないように気をつけて慎重にも慎重を重ねての作業となります。
という流れで無事完成!
JACOBSEN、いいなあ。

文字盤を描く

置時計の文字盤の色が薄くなったり焼けたりした場合にどんなことができるでしょうか。
元々の文字盤が入手できれば丸ごと交換するのも一案かと思います。
それが出来ないとなると、さあどうしましょうか。
今回は数字を手描きで修復することにしました。

数十年経過してる元々の雰囲気をできるだけ壊さないように、数字だけを修復することにしました。
書体を見てお分かりの通り、フォントの装飾部分であるセリフが細いこと細いこと。果たしてこんな線を描けるのかなあ?心配もありますが、できる限りの準備をして臨みます。

描くと決めた以上、筆と塗料には最大の注意を払って選びます。今回「00000」とゼロが5個並ぶ面相筆を使ってみます。塗料は秘密。
顕微鏡下で時間を無限に?使ってゆっくりゆっくりと進めます。息を止めて集中するので酸欠になりそう。

一つできるごとに休憩しながらですが、手の筋肉も段々凝り固まってきます。
ふらふらになりつつようやく「6時」まで来たところです。
半分で出来たと喜んでたのですが、ふと後半10時からは数字が2桁になるので実はまだ半分に達してないことに気が付きうろたえます。ぬか喜びです。
それでも焦らず一歩一歩、目の前の数字に集中することだけを考えて進みます。
時間はかかりましたが、ようやく完成した時の安堵、嬉しさは格別でした。

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電波時計が止まったり、時刻がずれた時に、まず試してみる事は。

電波時計はほぼ全ての機種が光を文字盤で受けて発電して、それをキャパシタに溜めて、その電力でクオーツムーブメントを動かす仕組みになっています。一種の太陽光発電ですね。
正常に動いている間は時刻を正確に教えてくれるのでとても便利な反面、一旦止まったり時刻がずれてしまうと、元通りにするには一定の操作を要求されるので、マニュアルを見ずに直感的にささっと合わせることは難しい仕組みになっています。


そんな時はまず最初に充電ができているかどうか?確認してください。
充電レベルが確認できるモデルは少ないので、おかしいなと思ったらとにかく充電してみることをお勧めします。
身近で一番強い光は晴天の太陽光です。ガラス越しでいいので直射日光が当たる窓際に時計の文字盤を日の指す方向に向けて最低でも1日、できれば2〜3日は十分な光を浴びさせてください。もし電池残量がゼロだった場合は、その状態で5〜6日充電してようやく満タンになるイメージです。文字盤の面積は小さいので、充電には結構時間がかかります。
太陽光以外ですと、家庭用の電気スタンド(蛍光灯やLEDライト)を極力近付けて充電してください。
蛍光灯やLEDライトの場合は1〜2cmまで近付けてもほとんど熱くないので大丈夫かと思います。
こうした人工灯は明るいように見えても、太陽光と比べると1/10とか1/00とかのレベルでしかないので、同じだけの充電をするにはより長い時間を必要とします。
明るさは距離の二乗に反比例するそうですから、天井に取り付けた照明器具に向けてテーブルに時計を置いて充電してもまるで捗らず気休め程度にしかなりません。
なおフィラメントの入った電球やハロゲンランプで充電する時は熱くならない程度に十分な距離を取ってください。

こうして充電している内に十分なレベルに達すると、深夜(1時〜5時ぐらい)に自動的に電波を拾って気が付けば正常な状態に戻っていることもあるでしょう。
こうなればしめたもの。念の為にもうしばらく充電を続けてみることをお勧めします。
電波受信のタイミングは深夜の電波が伝わりやすい時間帯に設定されています。窓際に時計を置いておくと受信しやすく、一方で地下室や周りを建物や壁で塞がれた場所では受信出来ないこともあります。
昼間なら見通しの良い場所で強制受信を試してみてください。電波を受信中は時計から手を離して動かさないことがコツです。

充電はちょうど風呂桶にお湯を溜めるようなイメージです。
半分溜まった状態でも何とか風呂に入ることは出来ますが、体を洗ったりする内にそこからお湯は減ってしまいます。どうせなら満タン一杯溜めておけばより安心です。
一旦満タンになれば、数ヶ月は何もせずとも時計は動いてくれます。その後は少なくとも1ヶ月に1日ぐらいは太陽光にしっかり当てていただけば余裕を持って正常な状態でお使いいただけると思います。

当然のことですが、時計を引き出しにしまっていたりすると中は暗闇ですから充電はできません。そういった閉め切った場所に長期保管していると、キャパシタに溜めた電力も少しずつ放電していって、そのうちに時計は止まり、最後は空っぽになります。機種によっては自動的に省エネモードになるのですが、いずれにしても増えることはなくて、徐々になくなっていきます。
そうなると内部で記憶している基準位置情報などが失われて、充電しただけでは元通り正常に動かないという面倒な状態になることが多く見られます。
充電が十分でも、ショックや磁気で基準位置がずれることもあります。

充電してみたものの時間やカレンダーが合わない、あるいは動きがおかしい場合はマニュアルに書かれた操作をすることになります。
次にすることの一つは基準位置合わせです。
電波時計は日本では
福島県のおおたかどや山標準電波送信所(40kHz)
佐賀県のはがね山標準電波送信所(60kHz)
これら2箇所からの電波を受信して動いています。
(最近のGPS全地球測位システムを利用した機種は異なります。)

時計にはあらかじめ基準位置があり、電波に乗って送られてくる情報によって、その基準位置からどれだけ動けばいいか判断して動くことになります。もし基準位置がずれていると、せっかく電波を拾っても、その分だけずれる結果となります。

もう一つ確認すべきは、使用する場所が日本になっているかどうかです。
ワールドタイムとして設計されている場合は、それが異なると、日本の電波を拾えない状態になっているので、そこを日本に設定します。
これらは充電レベルが復活すれば、必要な操作によって元通り使えるようになるケースです。この辺りで問題が解決できればいいのですが、いかがでしょうか。

もしこれでも不具合が解消されない場合は、解決に向けて別の方法を探ることになります。
一連の操作については個々の時計特有の手順があって多岐に渡るため、残念ながらここでご案内することはとても出来ません。
時計に付属している取扱説明書を見ていただくか、あるいは下記のサイトでダウンロードできる仕組みになっていますので、お持ちの機種を確認の上で試してみてください。
機種の品番は裏ブタに刻印されています。

SEIKO取扱説明書
https://www.seikowatches.com/jp-ja/customerservice/instruction

CITIZEN取扱説明書
https://citizen.jp/support-jp/manual/selection.html

CASIO取扱説明書
https://www.casio.com/jp/support/watches/manual/


実際は機種によって結構複雑な操作が必要になったりもします。またオールリセット(パソコンの再起動のようなもの)が必要になることもあるので、やってみないと分からないという感じです。
コンディションによっては、基準位置に合わせようとしても途中で止まってしまったり、違う時刻のまま動き出してしまったり、リューズ操作が出来ないなど、設定することが出来ない状態になっていることもあります。
これは時計内部の輪列の油切れなどによる抵抗が大きくなったか、電力を溜めておくキャパシタが消耗したか、リューズ周りに不具合があるか、いずれにしてもメーカーでの修理が必要な状況を意味しますので、その際にはご用命くださいませ。

ご自身でこうした作業をするのはちょっと不安と思われる方、故障かどうか分からない場合など、お持ちいただけば、状態の判断から必要に応じて充電や設定や修理をご案内いたします。
どうぞお気軽にご相談くださいませ。

充電から設定で完了した場合:費用 1,100円(税込)
十分な充電から設定まで、約1週間ほどお預かりすることになります。
修理の場合は見積もりをさせていただきます。修理完了まで約1ヶ月です。

Matsuya
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定休日:毎週火曜日(9月19日敬老の日・9月23日秋分の日も通常通り営業します)


Cartierの電池交換は精密な作業を要求します

写真はCartierのVERMEILのムーブメントです。ARGENT、TANKなどでも同様のムーブメントが使用されていますが、この機種に不慣れな方が構造を理解しないまま電池交換作業をしてしまうとどうなるか。
過去の一例をご紹介しましょう。

この機種は電池のプラス極は横から伸びてくる「く」の字型に曲がった細いレバーで、その扱いがポイントになります。レバーを格納するスペースがあるので、本来ならレバーを横に押しつつ電池をセットするところです。写真のレバーは上下に動かされることを想定していないのですが、上から押さえ込まれたことでヒビ割れが入って折れる寸前です。導通が得られずこれでは動きません。レバーを本来の位置に動かしたくてもその時点でポキッと折れるのは明らかで、このままでは電池交換はできません。
このような状態になった同型機種を見かけるのは初めてではありません。というか時々見かける状況で、なんでこうしちゃうかなと。それ自体が困った問題です。
メーカーに出せばフルメンテナンスで費用の問題がなければそれもいいと思いますが、その部分だけを直したい場合は何か方法はないものでしょうか。そんなご希望にお応えする話です。

赤い矢印の先が割れている箇所です

時計によって電池の組み込み方はさまざまで、ちょっとした手際の不出来が深刻な結果を招くこともあります。Cartierには他にも一部の機種に電池押さえのプレートを使うものもありますが、それも納めどころがきっちり決まっていて、絶縁体と絶縁体の間に差し込む必要があります。そこを間違えると導通がなく時計は動かず、間違って「故障」の宣告を受けることもありかもしれません。
そもそも他でよく見かける構造と異なるムーブメントに触れる際は細心の注意を払う必要があります。

さて、このレバーをどうするのか?
僕のお勧めする最善の方法は以下の通りです。
まずは折れないようにそうっと取り出してから、18金の極細地金を使ってひび割れをぐるり一周囲むような感じでレーザー溶接します。1mmに満たないごく僅かな部分のことなので手元震えないよう緊張する瞬間です。精密な作業でこれがうまく付いてくれると強度も戻ってバネ性も維持出来るし、金を使うことで導通もバッチリです。

レーザーで付いたレバーを戻したところ

そして元通りの状態に組んでいきます。

青い矢印の先がレーザーでくっついた箇所です。

出来上がりの状態はこの通りです。
グラグラすることもなくきっちり固定されています。

電池を組み込んで出来上がり。これでお使いいただけます。
電池交換込みでこの修理代金は5,500円(税込)です。(状態によって異なることもございます)

このような修理やちょっとした不具合など、お気軽にご相談くださいませ。
何でもできるわけではありませんがお客様にとっての最善を目指すことをお約束します。

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*9月9日(金)は18:30閉店とさせていただきます